「妻のありのままを受けとめる」夫を愛妻家に育てた漫画家・安野モヨコの麗しい“感度”【後編】

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▶▶【前編を読む】:「全力で守りたい!」夫を愛妻家に育てた漫画家・安野モヨコの麗しい“感度”【前編】

 『ハッピーマニア』で知られる大人気漫画家・安野モヨコさん。前編では、漫画家としての彼女の原点と、庵野監督との結婚による心境の変化をお届けしました。後編では、『働きマン』のような激務から一転して休養、そして新連載のスタートまで、彼女を支え続ける庵野監督の夫婦愛の形を見つめます。

今と、これから
鎌倉での休養の日々。庵野監督に見守られ、描きつづけた『オチビサン』と久々の新連載

 2006年9月に刊行された『hon-nin vol.00』に掲載された「よみよま」が、安野ファンに衝撃を与えました。
「本人」をテーマに刊行された雑誌で語られる、主人公の女性漫画家が抱える自信の無さや才能が無いことへの焦り、天才への嫉妬……。
 彼女の夫、庵野秀明監督は、映画「風立ちぬ」のインタビューでこう語っています。

嫁さんは巷ではすごく気丈な女性というイメージが大きいと思いますが、本当のうちの嫁さんは、ものすごく繊細で脆く弱い女性なんですよ。(中略)「強さ」という鎧を心の表層にまとわなければならなかっただけなんです。
出典:http://news.livedoor.com/article/detail/7919665/


 庵野監督との生活は、『監督不行届』というエッセイコミックに描かれています。
 安野さんがスランプに悩むとき、やめたいならやめてもいい、一度休んで、描きたければ続ければ? と懐の深い言葉をかける監督は、愛妻家で有名です。

心の中心では、孤独感や疎外感と戦いながら、毎日ギリギリのところで精神のバランスを取ってると感じます。(中略)そのために結婚もしたし、全力で守りたいですね、この先もずっとです。
出典:http://news.livedoor.com/article/detail/7919665/

 安野さんは2008年、朝日新聞日曜版に連載していた『オチビサン』以外の漫画を休載し、休養生活に入りました。
 さまざまな憶測が飛び交いましたが、2013年11月から『鼻下長紳士回顧録』の連載を5年8か月ぶりにスタートしました。
 朝日新聞の『オチビサン』は、7年間の連載ののち、2014年に終了。現在はAERAにステージを移し、多くの人々に愛され続けています。

ふわっと読んで欲しかったので、悩んで描かないと決めていました。悩んで悩んでこねくり回し過ぎると、読まれる方々もくたびれるんです。
出典:朝日新聞DIGITAL

 安野さんは、監督が気に入って決めたという鎌倉の家で仕事を続けています。豊かな自然と歴史が織りなす空気が、安らぎを与えてくれました。
 漫画家として「教祖」「神様」と称えられる立場にありながら、安野さんの心の中にはいつも孤独や焦り、嫉妬がうずまいていたのでしょう。

 モノを創りだす人間は、その評価から逃れられません。作品の持つイメージが作家本人を縛り、心をすり減らせてしまうこともあります。
 しかし庵野監督が見せる、「漫画家・安野モヨコ」を突き抜ける彼女自身への鋭い洞察は、深い愛を感じさせます。

「(庵野監督は)一度好きになると嫌いになったり飽きたりすることはない」
出典:http://www.shodensha.co.jp/fy/special/0502anno.php

 監督の「ゆるぎなさ」も、彼女に安らぎをもたらしているのでしょう。

 庵野監督は巨匠で愛妻家と、世の女性が憧れるスペックを持っています。しかし、生活人としてはかなり変わった「オタク」です。
安野さんが監督に向ける「オタクと結婚するのって、可愛くて楽しい!」という愛と、妻のありのままを受けとめながら才能を尊敬し、守り続けるという監督の愛。
エヴァンゲリオンに登場する「ATフィールド」は、“心の壁”。傷付き疲れ果てた安野さんを再び漫画へ向き合わせたものは、心の壁も貫く「愛」だったのでしょう。
(こうのまちこ)

キラリと輝く名言

くたびれ果てているところから1ミリでも回復してもらえるものを描こう。

▶▶【前編を読む】:「全力で守りたい!」夫を愛妻家に育てた漫画家・安野モヨコの麗しい“感度”【前編】

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+