「20代はテニスが嫌いでした…」43歳、クルム伊達公子が語る“1分の大切さ”

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出典:ゆるまと

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 今回は、40代になった今も戦い続ける女性アスリート、クルム伊達公子さんの「年齢やブランクさえも味方につける生き方」、彼女のいう「1分の大切さ」を見つめます。

ワタシのあの頃
テニスが大好き! でも、大嫌い…。負けず嫌いのあまり、負けることから逃げた20代

テニスを始めたのは6歳の時でした。

いや、強くなりたいとか、そういう気持ちじゃなくて、とにかく1番になれない悔しさでしたね。1番が好きなのに、1番になれない悔しさ。それだけでしたね、最初の頃は。
出典:http://www.1101.com/

 18歳でプロの世界に入り、世界のトップテニスプレイヤーとして活躍。95年に世界ランキング4位に上りつめました。そして、翌年26歳の若さで惜しまれながら引退。後に、引退時について、クルム伊達さんは「テニスが大嫌いになっていた。復帰するなんて、1%も考えたことがなかった」と話しています。周りからの期待をプレッシャーに感じ、疲れてきっていたのです。

 その後、テニスから離れたことで、やりたいことが何でもできる生活に。ストレスからも解放されました。でも、子どもにテニスを教えたり、他のスポーツに触れることで、テニスに対する想いが変化し始めます。

 ずっと好きだったことが、大嫌いになる――。「好きなことを仕事にする」ということは、一見、素晴らしいことのように見えますが、実はそれだけで大きなリスクをはらんでいるとも言えるでしょう。
 
 ましてや世界で活躍するトップアスリートともなると、そのリスクを回避するのは決して簡単ではありません。その道を突き詰めて上へ上へと駆け上ることで、周りの期待からくる重圧が、いつか「好き」という気持ちさえも阻んでしまったのでしょう。

 クルム伊達さんの場合、人並み外れた強い精神力をもってしても背負いきれない重圧が、いつのまにか「テニスの楽しさ」よりも上回ってしまったのかもしれません。

変わったきっかけ
憧れの選手と試合するために、37歳で現役復帰。11年かけて思い出した“戦う楽しさ”

 「ナブラチロワ、グラフと試合をしませんか?」ある時、そんなエキシビションマッチの話が舞い込んできます。2人は、小さいころから憧れていた選手でした。まったくテニスをしていなかったのでためらいましたが、心を動かされ試合を受けることを決めます。

 その後、必死に練習に取り組む中で、次第に眠っていた負けず嫌いな気持ち、闘争心が呼び起されます。テニスの「戦う楽しさ」を思い出していったのです。

人間というのは成長を求める生き物だと思うのです。試練を乗り超えて自分のレベルを上げたい。そういう気持ちは誰しも心のなかにもっているのではないでしょうか。私の場合、その気持ちを思い起こさせてくれたのは、やはりテニスでした。『やっぱり私はテニスが好きだったんだ』と気づくのに11年もかかってしまいました。でもそれは私にとって必要な時間だったと思います。
出典:http://shuchi.php.co.jp/article/1086

 もう一度テニスをすることにしたクルム伊達さん。「新たなる挑戦」を宣言し、プロテニスプレーヤーとして再発進しました。そして、復帰後初めて出た大会でまさかの準優勝。観客、そしてメディアの度肝を抜きました。

 一時は「大嫌い」とまで思ったテニスをまた好きになるまで11年。身体能力が問われるアスリートの世界では当時でも今でも異例の長さのブランクです。もし、その間ずっとテニスを続けていられたら、もっと強くなっていたのでしょうか――? クルム伊達さんが復帰を公にした瞬間に、そんな疑問を持つ観客やメディアもいたかもしれません。
 
 でも、彼女はそのブランクを「必要な時間」と言い、テニスから離れたからこそ得られたものがあったことを自らのプレーで証明しました。それは「ブランクをものともしない」どころの強さではありません。むしろ「ブランクを味方に変える」強さと言えるのではないでしょうか。

ワタシの信念
大好きなテニスと向き合う43歳。「1分あれば逆転できる。人生もテニスも」

出典:すらるど

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 クルム伊達さんは「テニスが続けられることをほんとうに有難く思っています」と話しています。

四十歳を超えて世界で戦う私は、「どうしてそんなに頑張れるのですか?」とよく人に訊かれます。頑張っているという実感はなく、好きなことをして人生を楽しんでいるというののが正直な気持ちです。
出典:進化する強さ (一般書) 単行本 クルム伊達公子

 昔と比べたら、体力や回復力は落ちてきたかもしれません。ただ、「量より質」を重視したトレーニングや、練習だけでなく生活全般における「効率」「時間」を大切にする姿勢は、20代の時にはなかったものです。

私はできるかぎり時間を効率的に使いたいタイプなのです。(中略)『1分の大切さ』を、身をもって知っているからかもしれません。テニスでは1分あれば試合の流れが変わります。負けている試合であっても逆転が可能なのです。ましてや、アスリートとしての私に残された時間は決して多くはないですから、よりいっそう時間を有意義に使いたいのです。
出典:http://shuchi.php.co.jp/

いくつになっても、チャレンジをする気持ちは失わずに。その気持ちを持ち続けることで、自分らしさ、自分の生きる幅、と言うのを広げられる事になると思います。年齢関係なく、皆にトライして欲しいですね。(中略)とにかく、今戦える場所がある中で、自分のチャレンジは、出来るところまで、やりたいという気持ちはあります。反対に、どこが終わりの日になるのかな?って、自分でも悩むところがありますね。
出典:http://www.omosan-st.com/

 テニスの世界では「1分でも逆転が可能」。そんな世界に身を置くクルム伊達さんは、潜在的に、「人生も1分あれば逆転できる」と信じているのかもしれません。そして、その1分を諦めなかった人が、ゲームでも人生でもかならず満足のいく結果を勝ち取り、人々を魅了するのです。
 
 常に神経を研ぎすまし、好きなことを楽しむ姿勢。そして「年齢やブランクさえも味方につける生き方」をまっとうし続けるクルム伊達公子さん。彼女が私たちにくれる勇気とエネルギーの量ははかり知れません。

キラリと輝く名言

1分あれば逆転できる。人生もテニスも

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+

【参考記事】

クルム伊達公子オフィシャルサイト
現役復帰7年目のシーズンを戦うクルム伊達公子選手に独占インタビュー!(PR TIMES)
クルム伊達公子・ 彼女はなぜいまも進化を続けられるのか?(PHPビジネスオンラインシュウチ)
クルム伊達公子インタビュー(Omosan Street)
クルム伊達公子さんのふつうは無理な道のり。(ほぼ日刊イトイ新聞)