自分にしっくりとくる世界は、自分がつくればいい。漫画家・西原理恵子【後編】
前回は、漫画家・西原理恵子さんの作品の原点とも言える、過酷な私生活から確立させた人生感についてお届けしました。今回は、人生経験を活かした仕事論をみつめます。
今と、これから
商売が嬉しい。お客様がいるかぎり身内の悪口を言い続けたい
『いけちゃんとぼく』、『パーマネント野ばら』、『女の子ものがたり』など西原さんの作品は次々に映像化。
2011年には、アルコール依存症の夫と二人の子との生活を描いた『毎日かあさん』も、ついに映画化。西原さんを投影した「かあさん」役を演じたのは、小泉今日子さんでした。
棺桶を出して、お別れして3年経って、ようやくって時期にまた棺桶を開けるところから始めるわけですから、そりゃ映画を観るとキツいものがありました。(中略)小泉さんは“だから離婚したんだよね”みたいな凄い顔。永瀬さんは、小泉さんの前で、怒られた犬のような顔をして(笑)。私しか知らないはずの鴨ちゃんのこころもとない笑顔とかよく知っているなって思いました。
出典:http://www.filesend.to/plans/cinema/news.php?dalist=20110222
西原さんの躍進は止まりません。漫画だけでなく、エッセー、トークショーへの出演と幅が広がっていきました。雑誌で、読者のお悩みに「理恵子ママ」、「人生経験豊富なオバちゃん」として答える企画でも人気を集めました。
一つしか出せるものがないんじゃ、商売できませんからね。私が八百屋やったら、節操なく魚も置きはじめるんじゃないか……。きっと、お総菜も置いちゃうね。(中略)レポートもの、ストーリーもの、それからお笑いもの、グチもの。全部、小品を分けて、なにかダメになったからといって、総崩れしないようにしているんです。
出典:http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090526/155497/?rt=nocnt
私は、コロッケ屋のおばちゃんと一緒。商売が嬉しい。働いていること、お客さんが来てくれることが嬉しい。出典:http://www.filesend.to/plans/cinema/news.php?dalist=20110222
女の人は、立っているだけで美しいって言われる時期から、立っているだけでうっとうしいって言われる時期まで、段階を経験するんです(笑)。自然とステージを変えてやっていかなきゃいけない。それが作品を作る上で良い引き出しになるんですよ。もうちょっとすると、嫁いびり、その次ぎは孫いびりかな。お客様がいる限り、身内の悪口を言い続けたいと思います。出典:http://www.filesend.to/plans/cinema/news.php?dalist=20110222
セレブな奥様に素敵な暮らしの自慢話をされたって、なんの参考にもなりませんから。それよりも七転び八転びしてきたオバちゃんたちがここまでどうやって生き抜いてきたのか。今、この荒れ野原に立って“これだけはやめとけ!”って話をするから聞いときなさいよっていうね。先人のサクセスストーリーより失敗話のほうが聞いておいてよかったってことがきっといっぱいあるんじゃないかって
出典:http://ddnavi.com/interview/117246/
西原さんに注目するとき、何でもネタにする芸人のような開き直り、大バクチ打ちの豪快さに、つい目を奪われてしまいます。けれど、多くの人が彼女の作品に惹かれるのは、はた迷惑だった元夫を始めとする人間への優しい眼差し、作品の奥底に流れる郷愁ではないでしょうか。
家が戦場みたいだった子ども時代、西原さんは夢見たといいます。
「どこかにきっと、自分の心にちゃんとしっくりくる世界があるんじゃないか。もしないのなら、自分でそういうものをつくっちゃえばいいんだ!」(「この世でいちばん大事な「カネ」の話」西原理恵子著/角川文庫)
その強い思いが、確かな自分の世界をもぎ取るため、彼女を果敢に歩ませ続けるのかもしれません。
(mami)
キラリと輝く名言
▶▶【前編を読む】:驚きの実体験を痛快に描く“無頼派”! 漫画家・西原理恵子さん【前編】
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+