お母さんになるための「修行」から「好き」で満たされた人生へ。黒柳徹子、38歳の決断に学ぶ
今回は、「徹子の部屋」や「世界ふしぎ発見!」など、長年にわたっていつもテレビの第一線で活躍し、ユニセフ(国連児童基金)の親善大使を30年続ける黒柳徹子さんの、「継続力」のヒケツを見つめます。
ワタシのあの頃
女優や司会者として活躍する裏で、生活が仕事に飲み込まれる日々
今からおよそ60年前、まだ日本でテレビ放送が始まって間もない頃、NHK放送劇団のテレビ女優第1号として花々しいデビューを飾った黒柳徹子さん。最初は女優になるつもりはなく、「子どもに絵本を読んであげたり、人形劇を見せてあげられるようなお母さんになるための修行」として始めたそう。
そんなきっかけで始めたテレビの仕事も、「夢で会いましょう」などの名作に出演し、どんどん存在感を増していきました。しかし大活躍の裏で、仕事に飲み込まれるような毎日を過ごし、気がつけば15年の月日が経っていました。そして、ついに過労で倒れてしまうのです。
ここはひとつ、一生涯この仕事を続けていかれるのかどうか、一度じっくりと考えてみないといけないなと思いましてね。
出典:http://towa-sentaku.jp/anohito/女優として、仕事における二つの大きなセンタク/
38歳のとき、「一度しっかりと演技の勉強をしたい」という気持ちから、当時はまだ女性1人で生活するには危険とされていたニューヨークへ留学。積み重ねてきたキャリアを一切捨てて、まもなく40歳という年齢からの新たな出発は、不安の方が大きくて、なかなか踏み出せないものです。しかし根っから前向きで、好奇心旺盛な黒柳さん。挑戦してみたい気持ちの方が、はるかに上回りました。
「もう15年もやっていて、ちょっと休んだくらいで仕事がなくなるなら、それは才能がないってことだわ。まだ40歳だし、なくなった時はなくなった時で、また他の仕事を探せばいいわ。もしかしたら、もっと自分に合う仕事が見つかるかもしれないじゃない?」なんて思って。
出典:http://towa-sentaku.jp/anohito/女優として、仕事における二つの大きなセンタク/
とにかくプラス思考で、やりたいことを何でも挑戦する黒柳さん。ストレスの多い社会の中では、不安に襲われてしまったり、くよくよと悩んだり、立ち往生してしまいがちですが、黒柳さんの言葉には、悩んでいたって何も始まらないわよ、とぽんっと背中を押してもらっているような、明るさと力強さがあります。
母はよく私に「あなたは『反省』という言葉を私の胎内に忘れてきた」と言っていましたが(笑)、時が来ればたいてい、乗り越えられます。本当に明日は必ず来るんですから。
出典:http://towa-sentaku.jp/anohito/80歳の今、次なる大きなセンタクは?/
変わったきっかけ
ニューヨーク留学での充実した楽しい日々。心底好きと思えることだけをやっていこう
ニューヨークでの日々は、毎日が楽しく刺激的で、あっと言う間に時が過ぎました。通っていた演劇学校では、プロを目指す志の高い仲間から多くのことを学び、ニューヨークの先進的な考え方にカルチャーショックも受けました。特に印象的だったのは、女性がはっきりものを言い、自由でのびのびしていること。黒柳さんの考え方を大きく変えました。
そして、ニューヨークでの生活が1年になろうとした頃、日本から、女性をメインとした新しいテレビ番組のオファーがきました。
自分の好きなことだけやっていくのって、若いときは難しいことでしたから、マネージャーとよく相談しました。「これをやると有名になるだろう」とか「お金が入るだろう」とか、いろんなことがあっても、そういうのは、やらないで、自分の好きなことだけをやってきました。
出典:http://www.1101.com/kuroyanagi/2008-09-19.html
何度も「好きなことか」「本当に自分がやりたいことか」を考えて、日本に戻り、再びテレビの仕事を始めることを決意。その後の「徹子の部屋」、「ザ・ベストテン」、「世界ふしぎ発見!」などでの活躍ぶりは言わずもがな。どの番組もテレビ史上、伝説とも言える長寿番組となりました。
長く続ける秘訣は、「好きなことしかやらない」という一貫した哲学があったからなのでしょう。
時間的にはずいぶん忙しそうなんですけど、すすんでやるものしかやってないから大丈夫なんです。嫌いなものなんて、ない。
出典:http://www.1101.com/kuroyanagi/2008-09-19.html
わたしはなにをしていても、おもしろくないときがないの。
出典:http://www.1101.com/kuroyanagi/2008-09-19.html
「好きなことしかしない」と聞くと、それは才能がある人にしか言えない、自分勝手な意見のように感じる場合もありますが、本当はすごく難しいことなのかもしれません。その信念をつらぬくには、勇気と覚悟が必要です。
黒柳さんの「好きなことしかしない」哲学は、言い訳をして、自分が本当に求めることからつい目をそらしてしまいがちなとき、もう一度自分の気持ちと向き合う大切さを教えてくれます。
今と、これから
「徹子の部屋」は50周年を目指します!
50代に入った黒柳さんは、テレビの仕事以外にも活動の場を広げます。ユニセフ(国連児童基金)の親善大使として、自然災害や戦争で貧困にあえぐ世界中の子どもたちのもとへ、今でも自ら進んで会いに行っています。その活動は30年にも及び、こんなに長く親善大使を務める人は他にはいません。
決してたやすくは行けない場所へ、目をつぶりたくなるような悲惨な状況下でも、ずっと足を向け続けるのは、やはり「好きなことだから」なのでしょう。そして、好きなことを突き詰めると、自分の「使命」が何であるかも見えてくるのかもしれません。
「進んでやりたいって思える好きなことをずっとやっているからですね。やだなあ、って思いながらやってても、人間は元気が出ないですよ
出典:http://www.sankeibiz.jp/express/news/140302/exf14030215440000-n1.htm
年を取って活躍している方を見るにつけ、長生きする者の務めってあるんだな、と思いますねぇ。
出典:http://towa-sentaku.jp/anohito/80歳の今、次なる大きなセンタクは?/
また冠番組「徹子の部屋」はまもなく40年目に突入します。さらに50周年を目指し、そのとき黒柳さんは90歳。そこから政治の勉強をして、100歳には政治家にインタビューしたいそうです。100歳まで政治を見てきた人が質問したら、政治家でもきっと正直に話をしてくれると思って。
「(老いを感じて)はじめのうちはちょっと諦めちゃうこともあるだろうけれど、いろんなことを考えてみて、老後を楽しく生きるための“何か”をうまく見つけることが大切ですよ。そうじゃないと人間だめになっちゃうって本当に思います
出典:http://www.sankeibiz.jp/express/news/140302/exf14030215440000-n2.htm
「継続は力なり」と言いますが、黒柳さんは「好きなこと」に真摯に向き合い、いつも全力で取り組み、気が付けば、「長寿番組」「ライフワーク」となっていたのでしょう。またその姿勢には、「自分をごまかさない」、「言い訳をしない」という信念を感じます。生きていれば、誰だって辛いこと、悲しいことに出会いますが、それでも一歩でも前に進む大切さを、黒柳さんの人生から学ばせてもらえます。(永倉佳代子)
キラリと輝く名言
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+