映画『0.5ミリ』が話題に。監督、作家、絵画と幅広く活躍する安藤桃子【後編】

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 前回は安藤さんが厳しい下積みを経て映画監督としてデビューするまでの道のりを紹介しました。今回は、安藤さんの瞳に映る厳しい現実のなかの優しさを見つめます。

今と、これから
妹主演の自作で映画賞を受賞。絶望をベースに希望を与えるストーリー

 主人公は、孤独に生きる老人介護ヘルパーのサワ。
 安藤さんが小説『0.5ミリ』を執筆したのは、家族と共に祖母を8年間介護したことがきっかけでした。体験を通じて感じたことの全てを言葉にしたかったといいます。
 “人はどう死を受け入れていくのか” 心に秘めた問いに向き合うため、介護センターに何度も足を運びました。

たとえば90歳の人がいたとしたら、その人がプライドを持って生きてきた90年という長い道のりがそこにあるわけです。彼らの刻んだ歴史や、誇りのあり方を知りたくて、介護センターの入所者の方たちに話を聞きました。出典: http://renzaburo.jp/interview/005/

 そして、彼女が意識したキーワードは“それでも、生きる”でした。

物語を考えるとき、まず始まりは“絶望”なんです。登場人物にとって救いようのない状況を考えてから、ひとりひとりに希望を与えるかたちでストーリーを作っていきます。実際は、物語の世界よりも現実のほうが断然、苦しいことや辛いことがあるわけじゃないですか。
出典: http://renzaburo.jp/interview/005/

人生には必ず一筋の光があると思うし、そう信じたいです。世の中に出して人の心に触れようとするならば、責任をもって、どこかに必ず救いのあるものを描きたい。
出典: http://renzaburo.jp/interview/005/

 
 2014年、『0.5ミリ』は安藤さん自らの監督、脚本で映画化され、報知映画賞、毎日映画コンクールなど数々の賞に輝きます。主演は妹の安藤サクラさんでした。

(前文略)妹ということとは関係なく、ずっと彼女と一緒に仕事がしたいと思っていたんです。こんなにとんでもない演技をする安藤サクラとベテラン俳優たちとが戦ったら、いったいどんな化学反応が見れるのか……。(中略)映画監督冥利につきる現場でした。
出典:http://tocana.jp/2014/11/post_5218_entry_2.html

 絶望がベースでも、絶望一色で終わるストーリーは嫌いと断言する安藤さん。彼女の思いを端的に表す一節があります。

穏やかな死を迎える為の準備は、生を受けた瞬間から始まっている。私たちの最大の矛盾、生と死を、私は必ず肯定したい。与えられたものも、どこまでも追ってくる影も、最期に見るべき光の為に存在するのだと思う。
出典:『0.5ミリ』安藤モモ子 幻冬舎 

 「カケラ」も、「0.5ミリ」も、決して心地良い、綺麗なドラマではありません。壮絶で生々しい現実、人間の、目を背けたくなるほどグロテスクな部分が描かれています。
 けれど、安藤さんのレンズを通して見たとき、どこか爽快感や温かさを感じるのは、彼女が一筋の光を信じているから。
 そして“愛と優しさ”を持ち続けているせいでしょう。

 血の通った、剥き出しの「愛」……それは痛いけれど、私たちを惹きつけます。
 安藤さんは昨年結婚し、第一子を出産しました。母となった彼女が生み出す新しい作品が、今から待ち遠しく思えてなりません。

                                                            (mami)

キラリと輝く名言

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▶▶【前編を読む】:わたしに描けるものはなんだろう。映画監督・安藤桃子【前編】

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+