わたしに描けるものはなんだろう。映画監督・安藤桃子【前編】

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BzrlW36CUAAKA2Q出典:https://twitter.com/100yen_koi/status/521238562495143936

 昨年、自作「0.5ミリ」の映画化で一躍有名になった安藤桃子さん。父は映画監督で俳優の奥田瑛二さん、母はエッセイスト安藤和津さん、妹は個性派女優の安藤サクラさん……今回は、華やかな芸能一家の“最後の登場人物”とも言われる彼女の、「愛」のある視点と生き方をみつめます。

ワタシのあの頃
映画監督にならなければ、一生、映画監督という職業にコンプレックスを抱く

 安藤さんが最初に取り組んだのは絵画でした。高校時代よりイギリスに留学、ロンドン大学芸術学部を次席で卒業しました。その後、ニューヨーク大学に進学、映画作りを学びます。

実は最初はすごいイジメられたんですよ、差別があったりとかいろいろ。学校の寮で生活してたので逃げ場もなくて(中略)精神的にもすごく辛かったし、体調が悪くなったりもしたんですけど(中略)このまま帰ったら、生涯イギリスを嫌いになって、海外全てが嫌いになっちゃうかもと思って。
出典:http://www.j-wave.co.jp/original/lifeisagift/111119.html

 そして踏ん張った学生生活。有名人夫婦の娘として金銭的にも、家庭的な愛情にも何不自由なく育った安藤さんにとっては、多くの刺激的な出会いがありました。
 さまざまな人種、戦争で親を亡くしている人、想像もできないような苦しい想いをした人が創る作品はとてもパワフルで、彼らと過ごすうちに安藤さんは、自分の苦しみや表現をちっぽけに感じたりもしました。

それである友達に言われたのは、(中略)愛を知っているMomoが描く絵を自分には描けないから、愛を知っている人は愛を知った人の作品を描いて、知らない自分はそういう作品を作ればいいと思う。 だから世界は、いろんな美しいものが溢れているんじゃないかって言ってくれて。それで自分のエネルギーの源を「愛」とか「優しさ」とか、そういうものにしようと決めました。
出典:http://www.j-wave.co.jp/original/lifeisagift/111119.html

 やがて、帰国した安藤さんは、父の監督作「少女」にスタッフとして参加したことをきっかけに映画の道を歩み始めます。

アーティストは一人で表現できるが、映画監督は多数のスタッフを束ねる総合力がないと表現できない。映画監督にならなければ、一生、映画監督という人種にコンプレックスを抱く
出典: http://cinema.pia.co.jp/interviews/153251/103/

 育ちのいい人に限って、曲がってしまったり、世間を斜めに見ることが多いもの。なのに、“愛を知っている”私の軸は、『愛と優しさだ』と若くして見極めた安藤さんの発想は、かえって斬新で清々しく感じられます。
絵画から映画へ、表現の形が変わっても彼女の軸はブレませんでした。

変わったきっかけ
初監督の題材はガールズラブ。女として感じていることを描きたい

 映画の道を志した安藤さんは、行定勲監督作をはじめ、数々の現場で助監督を経験します。二世だから簡単に? と思われそうですが、父の娘だからこその苦労も、人に言えない苦悩もありました。母親の和津さんが語っています。

奥田の娘ということは言わないで、他所の監督の下に助監督でつきました。助監督といっても、3 トントラックへの荷物の積み降ろしを女一人でやらなくちゃならないわけです。
出典:http://www.club-willbe.jp/column/andok/index.html

一ヶ月半ロケに行きっぱなしで、ある日電話がかかってきたんです。
「お母さん?、今日は2時間半寝れる日なんだけど、もう1ヶ月髪洗ってない……」それで言ってやりました。「大丈夫、髪ぐらい洗わなくても死なないから、今日は寝なさい!」そういう状況で4年間助監督やってましたね。

出典:http://www.club-willbe.jp/column/andok/index.html

 2009年、安藤さんが初監督として挑んだのは、桜沢エリカさんのコミックを原作とした『カケラ』。ガールズラブという衝撃的な題材を筆頭に、自分を充足できずにいる現代のオンナノコの日常を描きました。
 セックスは勿論、生理や排泄などの姿も赤裸々に写しとったのです。

女性として生まれてきたのですから、女として日々感じていること、思っていることを描こうと決めていました。(中略)生理的な行動をあえて映画の中で描いたのは、そういう行為のときこそ、その人の無意識の表情やむき出しの部分が出てくると思ったから。(後文略)
出典:http://cinema.pia.co.jp/interviews/153251/103/

どんなに美人でも、賢くても、人に求められているという証明がなければその才能が光らない。赤ん坊は触られないと死んでしまう(中略)ハル(主人公)はまさにそういう危うい存在なんです。時々私から見ても日本の女の子の多くがハルみたいに見えることがあります。
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 インタビューでの、「主人公は日常も恋愛感もどんどん変化していくけど、それは女というものが変化でできているから」という言葉は、まさに女性ならではの視点を感じさせます。

(前文略)この映画で私が目指したのは化粧をほどこしたような、女の子の上っ面の可愛さではない。すっぴんであっても、怒ったり、怒鳴ったりしても、体から強烈に出てくる感情のマグマこそが美しいとそこに焦点を当てて演出をしました。
出典:http://cinema.pia.co.jp/interviews/153251/103/

 映画監督をめざすことを父の奥田さんにはなかなか言い出せなかったという安藤さん。奥田さんは、妻の和津さんから、「2人の娘がいて1人が女優、1人が映画監督、あなたの職業を2人が継ぐなんて幸せね」と言われて涙ぐんだといいます。

絆っていうのは絶対に摩擦を起こさなきゃつくれない。表層的な表面的なものは絆と呼ばない。痛いことばっかりです。でも、痛いのが怖いから言わないでおこうというのでは絆は生まれない。(後文略)
出典:http://newslounge.net/archives/42878

 家族についてこう語った安藤さんは、2011年、現実に体験した介護を題材にした小説『0.5ミリ』を発表することとなるのでした。
(mami)

▶▶【後編へ続く】
映画『0.5ミリ』が話題に。監督、作家、絵画と幅広く活躍する安藤桃子【後編】
〈 次回は10月29日(木)更新予定です 〉

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+