人の眼を気にしていた少女から、悪役プロレスラーへ。アジャ・コング【前編】

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aja出典:http://oz-a.com/profile/aja.html

今回は、女子プロレス界で異彩を放つ「悪役(ヒール)」として今も現役で活躍し続けるアジャ・コングさんの、プロレス界を引っ張り続けるパワーのみなもと、そして彼女が持ついくつもの意外な「顔」について見つめます。

ワタシのあの頃
ハーフに生まれ、いじめに遭った学生時代。苦労して育ててくれた母に泣かれた日

アジャさんは、1970年に東京都立川市で生まれました。
本名は宍戸江利花。
エリカの花にちなんだ名を彼女に付けたのは、父だったそうです。

父は米軍に勤務していたアフリカ系アメリカ人でした。
日本人の母との間に生まれた彼女がまだ幼いころに、父はアメリカ本国へ召還されてしまいます。
それ以降、アジャさん母子と父が再び会うことはかないませんでした。

アジャさんはアフリカ系の肌の色や、髪を持って生まれました。
そこで、幼いころからひどいいじめを受けてきたそうです。

母は親族の反対を押し切り、高齢出産でアジャさんを産み、女手ひとつで育ててくれました。
その母にしか、アジャさんはいじめの苦しみや怒りをぶつけることができなかったのです。
しかし、

「人にさげすまれる筋合いではない。堂々としていなさい」
出典:http://www.asahi.com/articles/TKY201311200137.html

と、母は励ましてくれました。

それでも、ある日、アジャさんの我慢は限界を超えます。

母に「産んでくれなきゃよかった」と言ってしまいました。母はまっ青な顔をして台所から包丁を出してきました。「あんたを殺して、私も死ぬ」。涙ながらに絶叫する母。私も泣き続けました。
出典:http://www.asahi.com/articles/TKY201311200137.html

それ以降、アジャさんは弱音を吐くことがなくなりました。
アジャさんが思いを母にぶつけたことで、母がどうしても自分を産みたかったこと、そしてどんなに苦労しても後悔していないこと、今も愛してくれていることを痛感します。

必死に働き母子家庭を支える母を気づかって、アジャさんは子どものころから家事や料理、針仕事などのお手伝いをしてきたそうです。
荒々しいイメージとは全く違う孝行な娘としての一面。いじめや差別で傷ついてきたアジャさんの内側には、母が父の分まで惜しみなく与えてくれた愛情がしっかりと積もっていたのでしょう。

変わったきっかけ
女子プロレス界にデビュー、唯一無二のキャラクターで頂点へ。そして芸能界にも進出

アジャさんは一世を風靡していたクラッシュギャルズの長与千種さんに憧れ、プロレス界を目指しました。
母には反対されましたが、「1度だけ」という条件で入門試験に挑戦。見事クリアしてプロレス界入りが決まりました。

アジャさんは当初、馬鹿にされることを恐れて「悪役」になることをよしとしていませんでした。
しかし、会社からは「ハーフだから悪役」と言い渡されてしまいます。
激しいいじめの記憶から、アジャさんは他人の目が気になり、目立つことを避けるようになっていました。

嫌だった悪役をさせられたことで、その傾向はますますひどくなり、アジャさんはプロレスラーとして伸び悩みます。
そんなとき、背中を押してくれたのが「極悪同盟」のトップだったダンプ松本さんや、憧れの人だった長与さん、そしてブル中野さんでした。

ブルはアジャの過去を知った上で、体格を活かしたシンプルな技を中心に使うようアドバイスする。(中略)コンプレックスは逆に考えれば自分だけの武器になる。やがてアジャは自分だけの持つ個性を伸ばすことで、プロレスラーとしても人間としても、吹っ切れたように力を付けていった。出典: http://voxdiary.jugem.jp/?eid=445

アジャさんはめきめきと実力をつけていき、トップ選手のひとりとして君臨します。

1990年、肝臓がんで最愛の母が亡くなったときも、彼女はリングで闘い、ずっと応援し続けてくれた母への思いに応えました。

また、瀬戸浅香さんと共演したジュースのCMで話題となり、芸能界デビューも果たします。
その強烈な見た目とはうらはらな、優しく飾らない本来の人間性とのギャップが受けて、バラエティ番組などでも活躍するようになりました。

2010年夏からはWAHAHA本舗に移籍し、活動の場を広げています。
かつて他人の目を気にして、好きな道でさえ光を見いだせなかったアジャさん。堂々とした今の姿からは想像もできません。
アジャさんは個性を「恵まれたもの」として受け止め、伸ばすことで、実力と自信を少しずつ育て、自分のものにしていきました。
文字通り心にも体にも「血のにじむ」努力のすえに、彼女は今の人気と名声をつかみとったのです。

(こうのまちこ)

▶▶【後編へ続く】悪役の顔も笑顔の自分も受け入れる。女子プロレスラー、アジャ・コング【後編】
〈 次回は8月26日(水)更新予定です〉

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+