「なんでだろう」より、「どうしたらいいか」で切り開こう。サッカー選手・澤穂希【前編】

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Japan v USA: FIFA Women's World Cup 2011 Final

出典:http://web.gekisaka.jp/news/detail/?89425-85185-fl

 今回は女子サッカー不遇の時代からけん引し続け、現在INAC神戸レオネッサに所属する澤穂希さん。小さいころから目標にしていた「ワールドカップ優勝とオリンピックでメダル獲得」を見事に達成した澤さんが話す夢をかなえる秘訣とは?

ワタシのあの頃
小学校では男子チームの中に女子1人。それでもサッカーをやりたかった

澤さんが6歳でサッカーをはじめたきっかけは、1つ上の兄の影響。練習を見に行ったとき「妹さんも蹴ってみない?」といわれ、たまたま蹴ったボールがゴールに。
 ボールの芯をとらえた感触と、ゴールが決まった瞬間の喜びは今でもはっきりと覚えているそう。

 小学校のときは男の子のチームに女の子1人。さらに、中学生になると女の子がサッカーをする環境が少なく、近くにあった読売ベレーザに12歳で入団。そこからサッカーづけの毎日がはじまります。

 1年365日あれば、いろんな日があるものです。それが何年も続けば、いい日ばかりが訪れるわけがありません。それでも私は夢をかなえるためには、夢のレンガを積む作業が欠かせないと考えています。夢のレンガとは、自分の足元に自分で積み上げるものです。自分が立っている地面に、一日一段、レンガを積むんです。翌日は、その自分で積んだレンガの上に立って、また一段、新しいレンガを積むんです。そうして一段ずつ積み上げていけば、ずっと先にある夢は「高い壁」ではなくて、「階段」になっているはずです。壁は一気に乗り越えられなくても、階段だったら上がれそうだと思いませんか?
出典:「夢をかなえる 思いを実現させるための64のアプローチ」澤穂希著 [徳間書店]

 負けず嫌いの澤さんも、悔しい思いをたくさんしてきました。

 小学生のときは、女の子という理由で大会に出られませんでした。
 20歳のときは、人気低迷が理由で、プロ契約を打ち切られました。
 米国移籍に活路を見出しましたが、ホームシックに陥ってしまいました。
 アテネ五輪予選では、試合を前に右ひざに大けがを負ってしまいました。

 そんな澤さんが、女子サッカー不遇の時代を切り開くことができた理由は2つ。

 “サッカーが上手くなりたい”という強い思いと、母の存在でした。

自分の進路を決める勇気を持てたのは、いつも母が言ってくれた言葉のおかげだ。「チャンスの波に乗りなさい」。何かにチャレンジしようとするときや、ステップアップしようという大切なタイミングを迎えた私に、母はいつもこう言って、エールを送り、背中を押してくれた。
出典:「ほまれ なでしこジャパン・エースのあゆみ」 澤穂希著 [河出書房新社]

 どんなことがあっても“続けること”によって運命を自分の望む方へ引き寄せている。そんな印象を覚えます。あきらめずに続けていくこと、1日1日を大切に過ごすこと、それによってチャンスの波に乗ることができ、結果は自然とついてくるのですね。“なんで”と現状をなげくより“どうしたら”と意識を前に向けることが変わるきっかけになるかもしれません。

変わったきっかけ
2011年ワールドカップ優勝。東日本大震災の4か月後、日本に希望をもたらした

 2011年6月。東日本大震災の3か月後に、FIFA女子ワールドカップがドイツで開催され、決勝では、日本が過去に一度も勝ったことがないアメリカをPK戦で破り初優勝しました。
 ベテランと若手のバランスのいいチーム構成で、日本サッカーの歴史を塗り替えました。

2011年にワールドカップで優勝したとき私は32歳。同年代の選手がほとんど代表チームにいませんでした。引退した選手もいれば、もう第一線でプレーできなくなった選手もいました。でもワールドカップで優勝すること、そしてオリンピックでメダルを獲得することを幼いころからずっと心の中に「絶対に叶える夢」として強く信じて持っていたからこそ、歳が離れた若い選手たちと強い絆で一致団結し世界一になれたと思っています。
出典: http://www.shiruporuto.jp/about/kataru/kataru316.html

 試合後の現地メディアのインタビューに答えた澤さんの記事は、震災後の日本国民にとって希望をもたらすものでした。

我々のしていることは、ただサッカーをすることだけではないことを、意識してきた。我々が勝つことにより、何かを失った人、誰かを失った人、怪我をした人、傷ついた人、彼らの気持ちが一瞬でも楽になってくれたら、私達は真に特別な事を成し遂げた事になる。こんな辛い時期だからこそ、みんなに少しでも元気や喜びを与えることが出来たら、それこそが我々の成功となる。日本は困難に立ち向かい、多くの人々の生活は困窮している。我々はそれ自体を変えることはできないものの、日本は今復興を頑張っているのだから、そんな日本の代表として、復興を決して諦めない気持ちをプレイで見せたかった。今日、我々にとってはまさに夢のようであり、我々の国が我々と一緒に喜んでくれるとしたら幸いです。
出典: http://www.twitlonger.com/show/bq7e15

 日本女子サッカー界をけん引してきた澤さんならではの、とても心にしみる言葉です。“あきらめないこと”が大切だと頭で分かっていてもなかなか前に進むことができないとき、澤さんを思い出すと頑張れそうな気がします。あきらめないで進んだ先に待っているものを、身をもって示してくれたのですから。

 
(北田江美)

▶▶【後編へ続く】誰に、なにを伝えるか。進化し続ける作家魂。作家・湊かなえ【後編】
〈 次回は6月17日(水)更新予定です 〉
 

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+