「悪あがきがしたかった」ひとり芝居の鬼才・岡田あがさの“惑わされずに自分を貫く強さ”【前編】

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 今回は、14歳で難病を患ったことで生死と向き合い、独特の感性と演技力を開花させ、現在も生きていることを力強く見せつける女優・岡田あがささんについて見つめます。

ワタシのあの頃
独自の感性を育んだ思春期。突然襲った病に立ち向かうためにとった行動、「ひとり芝居」

 岡田さんが育った家庭は、両親ともに芸に秀でていました。父はサックス奏者、母は文筆家。両親の影響を受けてか、岡田さん自身も絵画やフルート演奏を特技とする少女でした。 
 
 そんな、少し個性的な少女に襲い掛かった困難が、今後の人生を変えていくことになりました。岡田さんを襲ったのは、潰瘍性大腸炎という難病。
 原因不明で再発を繰り返すために、長く向き合わなければならない病の宣告に、当時14歳の岡田さんはひどく落胆したのです。

「人並みの幸せ」がなんなのかはわからない。別に不幸になるといわれたわけでもない。人の幸せなんて形はそれぞれだ。わかっている。しかし、この世の中に「人並みの幸せ」をつかむために生きている人なんているのか。私はそれを目指して生きていきたくなんかない。私は誰よりも幸せになろうと生きていきたい。諦めの悪い私は、悪あがきがしたかったのかもしれない。
出典:http://agatha0918.fc2web.com/aboutuc.html

 これから先、楽しい高校生活、大学生活が待っているという大切な時期の闘病生活。病室で思うことは明るいものではありませんでした。
 でも、岡田さんは体に鞭を打ちながら、運命なんてあいまいなものに翻弄されまいと立ち上がります。
 追い詰められたときに始めたひとり芝居。女優・岡田あがさの誕生です。

ここで甘っちょろく生きてきた自分の人生を変えようと試みる。この世間知らずのおばか患者の慰めとなったのは芝居だった。
この弱々しいちっぽけな肉体を媒体として、いかに強力なインスピレーションを与えられるだろうか。すべては意志によって裏付けられるというそれを確かめるべく、戦いが始まった。
出典:http://agatha0918.fc2web.com/aboutme.html

その時期は特に精神的に追いつめられていたのかもしれません。だから、あえて自分を一枚剥いでやろうと。そう思っていたんじゃないか。衝動的過ぎて、言葉ではうまく説明できないのですが。当日はかつてない感覚がありました。お客さん呼んでるのに、あ、私しかいないわみたいな。緊張はなく、ただただテンションが上がりました。
出典:http://www.intvw.net/okada_agasa.html

 不自由で閉鎖的な病室で感じ溜めたものを、ひとり芝居という形で解放した瞬間、岡田さんの中で大きく人生観が変わったのでしょう。
 自分の肉体を使って別の人格感情を伝えるために、先入観を捨てて自身の人格を消す。そうやって演じることは、とんでもないエネルギーを消費することでしょう。演じては倒れ、演じては倒れ……肉体的な限界を何度も迎えて乗り越える姿は、演劇に憑りつかれているように見えます。
 岡田さんの魅力のひとつである、ストイックでどこか憂いのある艶やかさは、苦痛を伴ってきた証なのでしょうね。

変わったきっかけ
とある有名演出家の一言が、生き方と演じ方の迷いを断ち切った

 劇団空間ゼリーでの舞台出演をはじめ、『見知らぬ乗客』、柿喰う客<女体シェイクスピア001>『悩殺ハムレット』など、活躍の場を広げた岡田さんでしたが、ふと立ち止まる瞬間があったそうです。
 生涯続けられる仕事なのかわからない。健康不安もある。絶対の答えがない芝居に対して全力で打ち込むから、本気で悩み苦しみました。

 考えすぎて、答えを見失いかけた岡田さんを救ったのは、演出家・宮本亜門さんのこの言葉。

「いらないものばかりに気を取られていると、為すべき事が出来ないよ。自分がやらずして、誰がやるんだと、そう思ってやる事が、未来に繋がる力だと
出典:http://www.intvw.net/okada_agasa.html

私は自分を貫き通すほどの強さが足りず、他人の事を否定せず真に受けていちいち聞いてしまうんですよ。周りのいらない声が聞こえてしまうというか。でも亜門さんの言葉でシンプルにやるべきことを惑わされずやれる強さを持とうと思ったんです。それがあったから、何が良くて何が悪いかを考えられるようになったと思います。
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無我夢中で演じ続けてきた中で、ふと自覚した自身の弱さ。省みるきっかけとなった、宮本さんの言葉に感銘を受けた岡田さんは、演劇に対してますます貪欲になるのでした。

舞台は繊細で毎日違う顔をしていて私はその敏感な生きものを愛していて願わくば飼い馴らしたいと思うのです。
それは神聖な作業で、自分の魂さえ捧げることに似ている気がします。
出典:http://ameblo.jp/agatha-okada/entry-10662038666.html

 毎度のように、ひとつの役を演じきると虚無感に襲われて、いてもたってもいられずに次の稽古に向かう日々。

やりたいことはたくさんあっても舞台に立つより他に私の命が少しでも意味を帯びることはありません。帯びたように感じただけでやはり私は何者でもないのですが。役を手放したときの私は更にからっぽでばかみたいに生真面目に生きるしかまるきり能がないのでした。非常にださいのでした。
出典:http://ameblo.jp/agatha-okada/entry-10471379548.html

 病床で感じた不安や焦り、悔しさから脱しようと始めたことが生きる力になって、その強い生命力に観客は惹きつけられていくのでしょう。

無理せずに手に入れた幸せなんて、私の望んだそれではないから。無理をしないで生きていたら何も起こらず気付いたときには土の中だ。あたしは絶対に止まりません。そして殺しても死なないのです。
出典:http://agatha0918.fc2web.com/aboutuc.html

 シリアスな役から大胆な役まで幅広く演じる岡田さんは、誰よりも人の感情に敏感で、自分に厳しくて、放っておいたらどこまでも走っていってしまいそうな気がします。
 それぞれの言葉は独特な言い回しですが、いつ再発するかわからない病を抱えているからといって、怯えていたくない。たった一度の人生を無駄にしたくないという強い意志を感じます。

 好きなことや、やりがいのある何かを見つけられたとしても、失敗したらどうしようと不安になるのがわたしたちです。なかなか人生をかけてまで取り組めません。
 だけど、失敗するかもしれないって言い聞かせてしまっているから、怖気ついてしまうのかもしれません。
 岡田さんのように「強くいよう」、「生涯やり通そう」と強く決意して、言葉にして行動しなければ、叶うものも叶わないなと気づきました。
(たまさき りこ)

▶▶【後編へ続く】:「アイツ危ないぞと思われても」ひとり芝居の鬼才・岡田あがさの“惑わされずに自分を貫く強さ”【後編】

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+