「目が死んどる」と言われ再燃。挫折をしなやかさに変える鍛冶職人、岡本友紀【前編】

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 今回は、「軽やかで、しなやかな、鉄」をテーマに繊細な作品を生み出す、女性の鍛冶職人、岡本友紀さんの、迷いながらもたどり着いた道を見つめます。

ワタシのあの頃
フランスの文化に影響された若い頃。そして、偶然の「運命の出会い」

 語学関係の専門学校を卒業後、証券会社に就職し、営業職として働いていた岡本さん。学生の頃から美しい装飾や人々が集うカフェなどのフランス文化が好きで、強く影響を受けます。
 初めて鉄装飾に興味を持ったのも、やはりパリへの旅行がきっかけでした。

学生の頃にparisに一人旅をしてparisにはまったのですが、フランス好きが高じてcafeでお茶するのも大好きになり、ルテスと言うcafeに行ってはお友達とあんなことしたいこんなことしたいと日課のように話をするのが会社帰りのお決まりとなっていました。
出典:http://www.loope.co.jp/interior/cl_top.php?mode=view&cid=446&type=1#columnTop

 やがて、地元のお気にいりのカフェに飾られていた鉄製のシャンデリアに心を奪われ、その作者でもあったカフェのオーナーに弟子入りを志願しますが、「女性には無理だ」と一蹴されました。けれど、数か月にも渡り通い続けた熱意が認められ、ようやく受け入れてもらえます。

20歳で入社した証券会社の仕事を今後も続けるか、迷っていた時期でもありました。そんな時に、鉄装飾の美しさに心を奪われてしまったんです。まさに運命の出会いですね
出典:http://www.cafeglobe.com/2013/08/032246career_okamoto.html

 実際にハンマーを叩けたのは志願してから9か月後といいますから、それだけの間、職人への情熱が消えることなく会社まで辞めて通い続けられたのは、その思いがまぎれもなく本物であったからでしょう。
 そして、それほどまでに心ひかれる作品と出会えた事は、アーティストとして、何よりの幸運だったに違いありません。

変わったきっかけ
厳しい修行に生じる迷い、一度はあきらめた職人への道


 ようやくハンマーを持つことができた喜びも束の間、実際にやってみると、想像をはるかに超えた重労働でした。
 弟子志願をした翌月に会社を辞めてしまったため、アルバイトと掛け持ちしながら厳しい修行を続けます。

小ぶりのハンマーを渡されて叩き方を教えてもらい焼けた鉄めがけて叩くのですが5,6回叩いただけで腕がフラフラ。(中略)週3回1日8時間休憩トータル1日40分弱。 甘えと筋肉痛と闘う修業の始まりでした。
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 そんな日々が数年続き、もうすぐ30代というひとつの区切りを目前に、色々な考えにとらわれてしまったという岡本さん。一度は鍛冶職人の道をあきらめた時期もありました。
 2年の間、まったく違う仕事をしたものの、挫折感を抱きながら過ごしたその期間は、修行時代より辛かったそうです。

「30歳になる手前で『もうダメかも』と思ってしまって、2年ほど鍛冶の仕事から離れていました。派遣の仕事を見つけて働きましたが、やっぱり諦めきれなくて……。私の修行時代をよく知る人に『目が死んどる』と言われて、再びスイッチが入りました。師匠に電話をかけて、もう一度チャンスが欲しい、と頼み込んだんです」
出典:http://www.cafeglobe.com/2013/08/032246career_okamoto.html

 その後、弟子入りから10年目に独立した岡本さん。最初は仕事もすぐには来ず、自ら個展を開いたり、地道な努力でやっと軌道に乗りかけたものの、リーマンショックの影響で苦しい時期もありました。

「せっかく増えかけたお客様が一気に減って、経済的にも精神的にも大変な時期でした。でも、『ここで諦めて、また悶々とした日々を過ごすくらいなら』と思うと踏ん張れた。夢を一度諦めたつらさが、逆に私を支えてくれたんです」
出典:http://www.cafeglobe.com/2013/08/032246career_okamoto.html

 挫折した2年の間、なにげなく街で美しい鉄装飾を見たとき、岡本さんの胸にはどんな思いが浮かんで来たのでしょうか。きっと、今まで大好きだったフランス文化に触れることさえ、辛く感じたのではないか……そんな気がします。
 『一度諦めた経験があるからこそ、苦しい時も頑張れた』という言葉は、「挫折は悪いことだけじゃない」、と教えてくれるようで、じわりと胸に響きます。

(小森矢 羽美)

▶▶【後編へ続く】:「女だけど」から「女だからこそ」へ。挫折をしなやかさに変える鍛冶職人、岡本友紀【後編】

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+