「なんのために生まれてきた?」イタリア文学者、須賀敦子の「結婚だけを目標にしない人生」とは【後編】

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▶▶【前編を読む】:「女らしさは自分で決める!」イタリア文学者、須賀敦子の「結婚だけを目標にしない人生」とは【前編】

ワタシの信念
孤独は荒野ではなく、人生を深めてくれるもの−−。生き続ける珠玉の作品たち

 帰国後、大学講師をしながら、文学博士号を取得。また数々のイタリア文学の翻訳を手がけます。
 そして60歳を過ぎた頃、イタリアで過ごした日々を回想し綴った初のエッセイ「ミラノ 霧の風景」を発表し、エッセイ賞、女流文学賞を受賞します。帰国後、すでに20年の月日が経っていました。

純粋な時間として考えると、六十年の人生のなかの十三年は、さして長い時間ではないかもしれない。しかし、私にとってイタリアで過ごした十三年は、消し去ることのできない軌跡を私のなかに残した。二十代の終わりから、四十代の初めという、人生にとって、さあ、いまだ、というような時間だったから、なのかもしれない。
出典:『ミラノ 霧の風景』須賀敦子 著[白水社]

 須賀さんの中でひっそりと眠っていた数々の思い出は、再び息吹を取り戻したかのように、珠玉の言葉となってあふれ出てきました。その後、次々とエッセイを上梓。静謐ながら言葉への情熱的な姿勢を感じる文体は、多くの読者を魅了していきます。
 しかし、デビューからわずか8年にして、惜しくも帰らぬ人となってしまいました。享年69歳でした。

人それぞれ自分自身の孤独を確立しないかぎり、人生は始まらないということを、すくなくとも私は、ながいこと理解できないでいた。(中略)私たちはすこしずつ、孤独が、かつて私たちを恐れさせたような荒野でないことを知ったように思う。
出典:『コルシア書店の仲間たち』須賀敦子 著[文藝春秋]

 須賀さんは、人生に真摯に向き合い、「自分がそのために生まれてきたと思える生き方」をずっと追求していたと思います。それは、ひとつひとつじっくりと練られた言葉、品格のあるセンテンス、文学への熱い思いを綴った須賀さんの本に感じることができます。
 須賀さんの文の行間には、人生でさけることはできない孤独を感じます。しかし、その孤独は、決してわたしたちを苦しめるだけのものではなく、時に癒し人生を深めてくれる孤独なのだと知ることができます。
 須賀さんが亡くなったあとも、残したエッセイの数々は、多くの場で語られ、全集が編まれるなど、いまだに人気は衰えません。世の中がまぶし過ぎて、思わず目を細めたくなったとき、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

(永倉佳代子)

キラリと輝く名言

自分で道をつくっていかなければ、なんにもならない。

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新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+