【後編】作家になりたい意志はなかった……。普通のOLから直木賞作家に変身した唯川恵が飽きずに続けていたこととは

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今と、これから
一冊一冊が勝負。変わることを恐れず、読者を裏切り続けたい。

 
 受賞後2年、唯川さんは夫と愛犬のセントバーナードと共に、東京から軽井沢に引っ越しました。注目されると同時に、それまで声も掛けてくれなかった編集者から食事に誘われたりすることが増えましたが、華やかな生活には違和感がありました。自分が自分じゃなくなるような気がしたのです。

軽井沢は、夏は涼しいけど冬は本当に寒いです。自然を前にすると、作品も雨や風とか雲や空、そんな比喩が多くなります。東京にいたときはビルやネオンが多かったのに。住む場所が変わると自分も変わります。
出典:http://www.jti.co.jp/knowledge/forum/2014/0926yuikawa/index.html

 多作で知られる唯川さんですが、もちろん簡単に書いているわけではなく、新人賞を獲ったとき審査員だった赤川次郎氏の、「井戸と同じで、汲み上げないと次が出てこないよ」という印象的な言葉を肝に銘じているといいます。

 住む所を変えたように、書く物も次々変化させていく唯川さん。彼女は、直木賞作家という称号に安住しませんでした。

読者の方を裏切りたい、とはいつも思っています。こうなるだろう、やっぱりこうなった、というところで終わりたくない。驚いてもらいたい。
出典:http://www.sakuranbo.co.jp/livres/sugao/2012/05/post-18.html

小説家としても、人間としても好奇心を失ったらおしまい。年齢を重ねると現状にとどまっていたいと思うけど、何かを変えていかないと。(中略)書けなくなる不安は常にある。小説の世界には先輩も後輩もないんです。一冊一冊、新人もベテランも勝負している。わたしもそうです
出典:http://www.jti.co.jp/knowledge/forum/2014/0926yuikawa/index.html

 現在唯川さんは、いくつかの小説賞の選考委員をつとめていますが、小説家をめざす人への言葉も、新しく挑戦し続ける彼女ならではのものでした。

(前文略)あとはいかに新鮮さがあるか、驚きがあるか、でしょうか。誰々さんみたいな小説を書きたい、という方は多いですけど、同じ作家は2人いらないですよね。やっぱり新しいものを求めますね。
出典:http://www.sakuranbo.co.jp/livres/sugao/2012/05/post-18.html

 現状にしがみつかず獲得したものも軽やかに手放す、恐れずに変わっていける……その強さが唯川さんの魅力ではないでしょうか。
 一方で、彼女は、自分が何を求めているかを自身に問いかけ続けています。力づくで変化するのではなく、日記を綴った頃と同じ柔らかい心で自分に向き合っているからこそ、新しさを失わず、人を惹きつける作品が生み出せるのかもしれません。自分を知らなければ、人を知ることだってできませんから。
(mami)

キラリと輝く名言

自分を変える、自分に還る。ちょっとずつ変えながら、本当の自分になっていく。

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新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+