ストーカー並の熱意で「林業女子」へ。東大という学歴を捨てて夢へ突き進む、大塚潤子

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 今回は、「都会の人と山をつなぐ仕事をしたい」と「林業女子」に転身を遂げた大塚潤子さんが見据える「地球の未来」、そして「森林への想い」を、見つめます。

ワタシのあの頃
仕事のやりがいと経済力、どっちを取る? とりあえず、一般企業に就職

 10代の頃から、環境問題に興味があって、東京大学農学部に入学した大塚さん。海外の森林伐採、砂漠化の問題など、森林に関わることを学んでいました。そして、いざ就職活動となったときのことです。大塚さんは…迷いました。

仕事としてなにを選べば、やりがいと経済を両立できるか見えなくて迷っていました。環境省を志望しようかとも考えたのですが、結局、3年間はふつうのサラリーマンの肌感覚を学ぼうと、修行のつもりで外資系のイベント会社に就職しました。
出典:http://www.zenrosai.coop/

 同級生たちは官僚や研究者を目指すことが多かったかもしれませんが、大塚さんはイベント会社に就職を決めます。そして、4年勤めたのち、退職。仕事に満足感がなかったわけではなく、「3年たったら、もう一度やりたいことを見直そう」と考えていたからです。

 「どんな仕事をやりたい?」と聞かれたら、まず何を考えるでしょうか。企業の安定、給料、働きやすさや仕事のやりがい……etc。人それぞれ重視するポイントは異なります。おそらく、大塚さんの周りには、「東大だったら、いいところに就職しなきゃ」という、ある意味みんなに共通するプレッシャーのようなものがあったのではないでしょうか。でも、大塚さんは周りに流されず普通のサラリーマンを選んだのです。
 
 そして、この後、大塚さんはずっと心に秘めていた森への想いを解き放つことになります。

変わったきっかけ
“異例の熱意”で、一般企業から、林業の世界へ

 次に何をしようかと考えたときに、頭に浮かんだのは「林業」の現場でした。学生時代に見た、林業の「理想と現実のキャップ」を思い出したのです。人手が少なく荒れている山々…。どうにかして現場の役に立てないだろうか……。そう思ったとき、林業ベンチャーの東京チェンソーズを知ったのです。

地球環境問題って途方もないじゃないですか。問題が大きすぎて、そこに個人として有効に関与できる解決策を見いだすのが難しいし、周囲と共有しようとするほどに、意識のギャップを埋めることのたいへんさを思い知らされます。(中略)そんなとき、東京チェンソーズの、世界の森を、日本の森を、とは言わずに、「東京の森を、自分の地域を良くしよう」 という考えに基づき、実効性のあるビジネスを展開しようとする姿に触れ、ひとつの答えを得たように思ったんです。
出典:http://www.zenrosai.coop/

 新入社員の募集はありませんでしたが、履歴書を送り、「森への熱意」を猛烈にアピールしました。ストーカーのように2、3年近くアタックし続け、ようやく29歳のときに念願の入社を果たしたのです。前の会社から、月給は2割ほど減りましたが、大塚さんは仕事のやりがいを得ることとなりました。

私には、東京チェンソーズが第一志望で、どんな会社より一番の会社でした。それに共感してくれる人もいれば、理解ができない、という人も、もちろんいます。だけどとにかく、自分にとっては超一流企業だったんです。
出典:http://www.zenrosai.coop/

 「大変なこともあるけど、ここだったら現場で頑張れるんじゃないかと思って」と新たな一歩を踏み出した大塚さん。「東大卒」の学歴にモノを言わせる仕事でなく、本当にやりたいことに実直に向き合い、志したのです。
 
 でも、大塚さんはまだ「夢のスタートライン」に立ったばかり。「森林のために少しでも役に立ちたい」という想いは、その先どこまで突き進んでいくのでしょうか。

今、そしてこれから
地球の幸せのため、山の“今”を伝える。目の前の仕事を精一杯真摯にやっていきます

 朝5時半に起き、荷物を担ぎ、山に向かう日々。しんどいときもありますが、「都会の人と山をつなぐ仕事にしたい」という気持ちが、大塚さんの挑戦を支えています。

腕力も体力も男性には到底かなわないので、いつかそこを技術と丁寧さで補えるような仕事ができるようになりたいです。10年はかかると思いますけれど。
出典:http://www.zenrosai.coop/

 林業という仕事について1年。「この1年で、心境が変わったりしましたか?」という問いかけに大塚さんはこう答えています。

考えてみたら、変わったかもしれない。入社する前は、「林業の現場をふまえた上での新たな可能性発掘&ビジネス化」をやりたいと考えていました。(中略)だけど、現場が毎日つづくと、とにかく一日仕事をきちんとできるだけのコンディションを整えるだけで精一杯。夏の下刈を終えた頃には、これまでの経験なんてほんとちっぽけで、そんなことに執着するより毎日目の前の仕事を精一杯真摯にやっていくことが何よりも大事、という結論に達していたような気がします。
出典:http://rookie-chainsaws.cocolog-nifty.com/

 当初にあった「こう変えていきたい」という想いも、実際に足を踏み入れてみると、思っていた以上に難しいと知りました。大塚さんはそこから「これからの新しい指針」のようなものを自分の中でハッキリと思い描いたのかもしれません。

 男性でも大変な林業の仕事。女性にとってはそうとうの重労働でしょう。でも大塚さんは、「去年よりも荷物を運べるようになったんです!」とむしろ、負担の重さまでも楽しんでいるように見えます。実際に足を踏み入れ、今の自分にとっていちばん大切なものを謙虚に見極める姿勢。地位や肩書きの上にあぐらをかいて実態把握をできていない大人たちに見習ってほしいとさえ思えるような姿が、そこにはありました。

振り返ると、もし私が新卒でここに飛び込んでいたら、未熟すぎてやっていけなかったと思います。一般企業での修行も、やはり必要だったんですね。
出典:http://www.zenrosai.coop/

  その生きざまは、「体裁を気にせず目指すところへ向かう突進力と謙虚さ」に加えて、「そうやって進む人生に無駄な経験は一つもない」ということを、私たちに示してくれています。
 
 これからも大塚さんは、東京チェンソーズの信念、自分の信念を貫き続けるのでしょう。

東京の木の下で
地球の幸せのために
山のいまを伝え
きれいな水と空気を再生し
持続可能な森林(もり)を活かし、育みます。
(東京チェンソーズ 理念)
出典:http://www.tokyo-chainsaws.jp/

キラリと輝く名言

腕力も体力も男性には到底かなわない。でも、いつかそこを技術と丁寧さでカバーしてみせる。

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+

 
【参考記事】
今月の「生きるヒント」(全労済)
東京チェンソーズ
東大卒の林業女子ってどんな人?~TV「明日はどっちだ」より
仕事場は森 将来見据える「林業女子」の選択
林業女子引き寄せるウッジョブ、収穫期「宝の山」を首相も後押し
林業女子:「明日はどっちだ」より