3人の子供を産んだシングルマザー。桐島洋子の「後悔なんてしない人生」とは

このエントリーをはてなブックマークに追加

 今回は、シングルマザーとしての自らの半生をエッセイにしたため、新たな女性の生き方、価値観を提示した女性、桐島洋子さんの考える「愛のカタチ」を見つめます。

ワタシのあの頃
元アメリカ海軍と不倫をし、子供を授かる。編集長の夢をやむなく断念

 小さいころから、たくさんの本に囲まれて育った桐島さんは、編集者を目指し、文藝春秋へ入社します。

 ある時、彼女は26歳年上のアメリカ人の退役海軍中佐と出会い、恋に落ちました。でも、彼はアメリカに離婚係争中の妻がおり、結婚できない状況でした。やがて子供を身ごもりましたが、当時の文春には「結婚したら退社」という規定が。

 いつか編集長になりたいと思っていたため、妊娠8か月までは大きな服を着てお腹を隠しつつ仕事を続けました。そして、出産前の2ヶ月は病気休暇を取得。27歳の時に「未婚の母」として、長女・かれんを産み、その後1週間で職場に復帰しました。

 翌年、2人目を身ごもり、同じように長期休暇を取って、会社には内緒で産むつもりでしたが、仕事が忙しく適わず、退社を決意。やむなく編集長の夢を断念しました。出産休暇のため予定していた2ヶ月のヨーロッパ旅行にはそのまま出かけ、到着直前に帰国の船で次女・ノエルを出産しました。

 今の時代でこそ、子どものいる女性が社会で活躍することは珍しくありませんが、当時は、女性はみんな、家庭に入るのか仕事を続けるのかの二者択一が迫迫られました。そんな時代に「仕事」を選んだ彼女への風当たりは強かったのではないでしょうか。
 
 でも、桐島さんは自分の選択を後悔することはなかったのです。
 
 20代を、不倫と呼ばれる恋、そして仕事に生きた桐島さんは、その後、最大の転機を迎えます。

変わったきっかけ
愛人に連れられ、ベトナム戦争の最前線へ。そして、離別、自立の道を選択

 その後、愛人がベトナム行きの船の船長になったため同乗。少しの間、夫人気分を味わいますが、彼が船主とケンカしてしまい、桐島さんたちはベトナムに置き去りにされてしまいます。

 「今度は私が働く」と決心し、桐島さんは従軍記者になりました。ベトナム戦争の最中、米軍が侵攻する非武装地帯へ。そして、若い兵士たちの死と向かい合いました。

人生これからという若者たちがどんどん無惨に戦死していくのを見送りながら生き残ったのですから、この貴重な生命をいい加減には扱えません。一生懸命に生きます。人を愛するのも本気でなければ意味がない。私は恋愛体質ですけれど、お遊び気分の軽やかな恋愛ゲームなんて全然興味がありません。だから危険や不利を顧みず不倫の恋に突き進むことが多かったですね。
出典:http://www.news-postseven.com/

 そんな最中、3人目の妊娠が発覚。日本へ帰国し、出産をしました。そして、ついに3人の子どもの父親との別れが訪れます。結局、一度も籍を入れることはありませんでした。

 その後、3人の子供を養うため、アメリカへ。当時の日本ではまだシングルマザーとして生活していくのが難しかったのです。自分が倒れたら、全員が路頭に迷ってしまうような綱渡りの生活でした。

 そして、いざという時のために、子どもへの遺書のつもりで『渚を澪と舵』を執筆。「破天荒なシングルマザー」としての経験を書いた自伝的エッセイでした。

 若い兵士たちの死に直面したことで、桐島さんのスタンスは出来上がりました。「世間的な正しさよりも、自分自身の価値基準を信じて突き進む」という生き方です。

 仕事のために子どもを預けながら過ごした20代とはまた少し違い、今度は「子どもを養うために働く」――。そして、愛する子どもたちのために書いたエッセイは、桐島さんの人生を大きく変えていきました。

ワタシの今、そしてこれから
新たな女性の生き方、価値観を提示

 『渚と澪と舵』は新しい女性の生き方を示した作品で、多くの女性からの支持されました。そして、日本から来たファンレターに後押しされ、「自分の本来の生きる場所で勝負してみよう」と、日本に戻ってきます。

 その後『淋しいアメリカ人』が賞を受賞、40才目前には『聡明な女は料理がうまい』がベストセラーになりました。

 またプライベートでは、45歳のとき、12歳年下の勝見洋一さんと結婚。結婚10年ほどで夫婦関係を解消しましたが、「それからの友情の方がずっと素晴らしかった。離婚後もよく二人で旅をしました。旅の道連れとしては最高の人でした」と後に桐島さんは話しています。

いいことも悪いこともすべてのことに意味があると思っているから、結婚も離婚も全然後悔していない。
https://www.youtube.com/

結婚はしても、しなくてもいいけれど、まあ古今東西世界中で採用され続けて来ただけのことはある賢く具合のいいシステムだと思います。(中略)結婚しなきゃという強迫観念で、できない人が不幸になったりしたりするのはばかばかしい と思いますけどね。
出典:http://www.toben.or.jp/

愛というのは、独占欲とか憎しみと裏表になっていて、必ずしも美しいことばかりじゃない。いいことばかりではないでしょう。私はそれはいい加減に卒業して、(中略)もっとひろやかに人々を愛したいです。
出典:http://www.toben.or.jp/

 一生懸命に、そして自分の心に正直に突き進んで、本来の生きる場所と使命ともいえる仕事に出会った桐島さん。そこに至るまでの数十年はすべて欠くことのできないものだったのではないでしょうか。
 
 愛すべきもの、生きるべき場所、果たすべき社会的役割。それらに出会うためには、長い時間と多くの経験が必要なのです。

 桐島さんの人生は、たとえ不倫をしていなくても、たとえ従軍記者にならなくても、たとえベストセラー作家にならなくても、「自分自身の価値基準で本当に愛すべきものを愛しているか。仕事も、人間も」と自分自身に問わせてくれます。

キラリと輝く名言

人を愛するのも本気でなけれでば意味がない。お遊び気分の軽やかな恋愛ゲームなんて全然興味がありません。

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+

【参考記事】

桐島洋子オフィシャルサイト
桐島洋子(Wikipedia)
桐島洋子さんインタビュー(LIBRA)
桐島洋子と甘糟りり子 人を愛すること・不倫について語る(NEWSポストセブン)
作家の桐島洋子さん(youtube)
【作家】桐島洋子の『聡明でしなやかな生き方』まとめ