「とりあえず」から天職“お直しのプロ”を見つけた庄司博美。偽装から理想に変わる“giso”への想い

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「とりあえず」から天職“お直しのプロ”を見つけた庄司博美。「偽装」から「理想」に変わる"giso"への想い_洋裁

 今回は、「冗談じゃないと思っていたこと」を「天職」にした女性、洋服のスペシャリスト・庄司博美さんの仕事観、洋服にかける想いを見つめます。

ワタシのあの頃
洋服が好き! デザイナーとして、洋服を作りたい

 庄司さんは、子供のころから洋服が好きでした。自分の着ている洋服を見て、周りが「かわいい」と言ってくれることが嬉しくて、毎日学校に着ていく洋服を一生懸命考えていました。

私にとって、洋服は単なるアイテムではなく、自分に自信を持って前向きに生きるための武器のような特別なツール。
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 その後、学校で服飾を専攻し、卒業後は東京の小さなアトリエの服飾デザイナーとして出発。そして26才のときに、有限会社偽装デザインオフィスを設立しました。

 細々ながら仕事が軌道に乗り始めたころ、銀座のバイヤーから「いろいろな洋服を、お客様が上手く着こなせるように手直ししてくれないか」とお声がかかります。そのお店は、日本初上陸のクリエーターの洋服などを発信するセレクトショップ、ファッション好きのマダムが贔屓にする名店でした。

 名店からの、まさかの「お直し専門」でのオファー。当時の庄司さんは、「デザイナーでクリエイターの自分が「お直し専門」なんて…ちょっと、冗談じゃない」と抵抗感を覚えました。でも、周りの意見を聞くと口々に「すごいことじゃない」「行かないなんてもったいない」など、絶賛の嵐。その後、「だまされたと思って1年は頑張ろう!」と意を決し、乗り込むことに――。

変わったきっかけ
“お直し”の面白さを体感。「不可能を可能にする粘り強さ」で挑む

 初めは抵抗感があったお直しの仕事も、いざ働き始めてみると、この仕事は単なる“お直し”ではなく、まったく異なる新しいサービスだと気付きます。洋服は出来上がりがベストの形だと思われがちですがが、着る人によってラインを整えることで、ぐっと印象が変わります。そして次第に、「ブランドのデザイナーも、お客さまも喜ぶような、お直しのスペシャリストになりたい!」と強く願うようになりました。

 庄司さんはお客様と話をするとき、洋服の悩みを聞くようにしています。

今まで自分ができなかったものをご注文頂くと、今はできないことでお返事ができないこともありますが、「できるかどうか方法を考えさせて下さい」と、お時間を頂いて様々な方法を模索します。
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 そうすると、今まではできなかった仕事が少しずつできるようになってきます。初めは販売している洋服のお直しのみでしたが、徐々にお客様にリメイクなどもお願いされるようになり、仕事の幅が広がっていきました。

フィッティング・コンシェルジュの仕事は、お客さまのご要望によって内容も幅も広がる。お客さまのご要望があればあるほど、私のやる気に火がつくんですよ。
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 次第に「“たんすのこやし”になっている服をリメイクしてくれる」という口コミが広まりお客さんが増えていきました。庄司さんの手にかかれば、一昔前のもう着られないウェディングドレスが、今風のスカートとして蘇るのです。

 庄司さんの夢はひょんなところから見つかりました。最初は「冗談じゃない」と思っていた仕事も、いざ真面目に取り組んでみると、面白さがにじみ出てくることもあるのです。
 
 どんな無理難題でも、「これができたら、ものすごく喜んでもらえるかもしれない!」とポジティブに粘り強く着地点を見出す――。まさに、人生を楽しむヒントです。庄司さんが「フィッティング・コンシェルジュ」と呼ばれる所以はここにあるのではないでしょうか。

ワタシの今、そしてこれから
毎日、前向きになれる洋服を提供したい。愛着のある洋服を“受け継ぐ”というスタイルを知ってほしい

 その後、勤めていたセレクトショップが閉店。それに伴い、自分の店「Artisan salon de giso」を開業しました。gisoは日本語の「偽装」を表しているそうです。

「偽装」には、(中略)まず装うことから始めていただいて、いつかそれが「なりたい自分」になれればいい、そのお手伝いを私ができればとの思いを込めているんです。
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日常生活の中には、汚れたら捨てても惜しくない服が必要なシーンもあるでしょう。でも、やはり長く愛着を持って着られるような洋服を仕立てるのが洋服の一つのスタイルだと、より多くのお客さまに知っていてほしい。
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洋服は、誰かのために着るというより自分のことを好きでいられるように、幸福感や自信を持って毎日を前向きに生きるために着るもの。
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 一見、「否」と感じることも、「無理かもしれない」と思うことも、持ち前の柔軟性と粘り強さを活かし、楽しみながら越えていく庄司さん。その結果、「冗談じゃないと思っていたこと」が「天職」に、「無理難題」が「お客様の幸せと自分の達成感」に、「たんすのこやし」が「代々受け継がれる洋服」に変わっていく――。

 まさに、「物事の価値は変換できる」ということを教えてくれるような生き方、考え方。ひょっとすると、わたしたちの人生の中にも、まだまだ「価値を変えられるモノやコト」があるのかもしれません。そして、それを見つけるコツはきっと、庄司さんのような「柔らかくて粘り強い視点」に隠されているような気がしてなりません。

 庄司さんはこれからも、お客さまの体型やデザイン、そしてトレンドを加味して、着る人と洋服と両方の個性がより生かされて美しく見えるようなフィッティングを提供し続けるでしょう。

キラリと輝く名言

「冗談じゃない!」そう思っていたことだって、天職になることがある。

新たな “視点” で、
昨日よりもちょっといいワタシに。
―――― eyes.+

【庄司博美さんの名言】
まず装うことから始めて、いつかそれが「なりたい自分」になればいい。
「冗談じゃない!」そう思っていたことだって、天職になることがある。

【参考記事】

第1回:「フィッティング・コンシェルジュ」って何?(かもめブックス)
第2回:「偽装」に込めた思い(かもめブックス)
最終回:職人として、職人を支えるものとして(かもめブックス)
「自分だけの服」「自分だけの時間」心を潤すこだわりサロン(東京中央ネット)
銀座のフィッティングコンシェルジュ 庄司博美さんのご紹介(youtube)